しんのじの夏-4

 積丹を漕いだのは2011年の7月末だったから、もう11ヶ月前を切った!早く
追いつこう・・・。

 林の中のログハウスに泊めてもらい、楽しい夜を過ごした翌朝は、いよいよ
待ちに待った積丹沖のパドリング。僕ら夫婦が乗せてもらったのはウィルダネ
スシステムズのノーススターという二人艇。やや重量級のこのフネは安定性が
よく、またシートが快適な造りで有名。いわおさんは、「一人で大丈夫」と言い
ながら大変器用に40kg超のこのフネを、スルスルと磯浜まで降ろしてしまい、
その手際に大層感心した。

 簡単な説明を受けた後、ガイド艇として先導する彼の後に付き、オレンジ色
のゆったりとしたフネは北の海に滑り出したのでありました。南欧の海と同じ
感じの深い群青色をした昆布の森の上を、うっすら汗をかきながら、前のシー
トに乗るカミサンと一緒に(といっても、すぐに疲れたり飽きたりしてサボる
(笑))漕ぎ進むのは爽快この上ありません。いわおさんは「暑い、暑い!」
を連発しますが、あってもせいぜい25度そこそこの晴天は、南国育ちの僕らに
とってはゴールデンウィーク明けといった感じ。体感気温の違いが興味深かっ
たです。

 入舸の漁港脇の磯浜から出発し、静かで心地よい海を漕ぎ進み、積丹岬から
東に回り込み、有名な女郎子岩(じょろっこいわ、着物を着た女の子に見える
奇岩)のそばでお昼休み。短パンに長袖のラッシュガードで、念願のシュノー
ケリングにトライする。海水が予想以上に冷たい!間違いなく15度以下。かな
り透明度の高い海の中には、リボン状の細い昆布がビッシリと生い茂っている。
魚はあまり目に入らないが、ウニの小さいのがたくさんいる。

 さすがに15分も潜っていると、南国の人間は寒さで限界になり、いわおさん
が用意してくれた絶品のタコス(朝、丸いのをたくさん焼いていたようだった
のは、これか!)に舌鼓を打った。スパイスを程よく効かせた挽き肉をその場
で炒め、予め用意してくれていた丸く焼かれたトルティーヤに、野菜と一緒に
包んで食べる。

 この時、用意してくれていたチリソースが素晴らしかった。チポートレとい
う、燻煙をかけた唐辛子で作られた大人味のソースをたっぷり振って食べると、
味にスモーキーな深みが加わって最高!これはピザにもきっと合うと思う。
元々メキシコ由来のチリソースみたいだが、これはお勧めです。  

 磯の岩の上で、ひとしきりアウトドアランチを楽しませていただいた後、幌
武意海岸の断崖を右に眺めながら漕ぎ進み、マッカ岩まで回り込んだ所で、少
し折り返し、近くのビーチに上陸して、10キロ強といったところのライトツー
リングが終わったのでした。その後、彼の奥様が車を回送して下さって艇と共
に帰り、ログハウスのすぐ近くにある「積丹の湯」という、大変気持ちのよい
公営の天然温泉にゆっくりと浸かり、後ろ髪を引かれる想いで、レンタカーに
乗った僕ら夫婦は、一路、札幌を目指したのでした・・・。